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text | 小説、その他文章作品

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a nameless cat | ネイムレス・キャット

シアワセを求めながら走り続けるタツ、ミユ、そしてクロノ。
どこにも逃げ場のない恐怖と苛立ち。
容赦なく襲う悲劇的な愛慕と、影のようにどこまでもつきまとう孤独。
その旅路の果てで彼らが手にしたものは…。

出版化された初の作品。(2004年)

PDFファイルにて冒頭部分を読むことができます。
ネイムレス・キャット(冒頭部分) / PDF(170KB), 2004

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Amazon.co.jpに投稿した著者コメント

午前二時半、世界はとても静かだ。
僕は今とても正直に、心をすっからかんにして机に向かっている。
真っ白なA4の紙。Bの黒いシャープペンシル。何も変わっていない。
時計の針の音がやけに大きく部屋に響いている。チク、タク、チク、タク。

僕は耳を澄ませる。暗く沈んだ夜の空気。
手を伸ばせば届きそうなのに、その震える指先はなににも触れない。
いつも僕のその指のほんの少し先で世界が動いている。
彼女の途切れそうな細い歌声が聴こえる。
彼の爪弾くギターの余韻がまだ僕の耳の奥に残っている。
それはついさっき通り過ぎたばかりの昨日のことのようにも思えるし、この星がまだ緑濃く、空が突き抜けるように青かった大昔のことのようにも思える。
彼らは今の僕を見たらなんと言うだろう?

もう一度会いたいなと思う。そして一緒にまた夜を明かしたいと思う。
夜を明かす─ 素敵な言葉だ。
僕は深く息を吸い、手をそっと伸ばす。その先で彼らは唄っている。
でも指はなににも触れない。消えかかる音符の影が優しく落ちる。

時計を見る。午前三時半。夜はまだ明けない。子猫は深く眠っている。
届かない指の先で、彼らは唄っている。